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賃貸用不動産や遊休不動産は時価注記…会計基準の変更

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2008年7月21日 第697号

不動産の時価主義とは


「イギリスの古い建築物はほとんどが石造りで、二度の大戦の被害にも遭っていない。この国では地震もめったにない。ロンドンをはじめとする都市部には、築後すでに数百年を経ていまなお本社・本店などとして使用されているものが少なくない。

これらの不動産は、建物だけとか土地だけとかで売買されることはない。通常は両者を一括して「土地および建物」として売買される。不動産を貸借対照表に記載するときに、両者を分離せず、「土地および建物」としてひとつの資産のように処理するのはこのためである。

こうして土地とともに取得した建物を減価償却しようとすれば、(1)耐用年数の見積り、(2)土地と建物への取得原価の配分、という二つの問題に直面する。すでに数十年数百年の歴史をもち、手入れさえすればさらにあと数百年の使用にも耐える建物も少なくない。耐用年数を合理的に見積ることが非常に困難なのである。取得原価を土地相当分と建物相当分に分けることはさらに困難なことである。

こうした事情のため、多くの会社は土地と建物を一つの有機的な構成物とみなし、定期的に再評価(時価評価)を実施して建物に生ずる減価を認識しようとしてきたのである。」

『時価主義を考える』田中弘著・中央経済社刊より

国際会計基準では投資用不動産は時価評価(上記の考え方)と原価評価の選択適用です。原価評価の場合には時価を注記することが求められています。

日本では、時価評価は行わないものの、原価評価での時価注記が求められることになります。


減損会計と時価主義


日本では固定資産についてすでに減損会計が強制適用されています。減損会計はいわゆる時価主義ではありません。

その資産が将来生み出す見込みのキャシュフロー(回収可能額)で、投資額(帳簿価格)を回収できないとの兆候があれば、回収不能額を算定し資産を減額します。時価主義のように見えますが、原価評価を補完するだけです。単に回収可能額(又は使用価値)を考えるだけであり直接に時価を適用しません。

不動産についての時価注記


企業会計基準委員会が2008年6月30日に「企業会計基準公開草案」として「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」を公表しました。

2010年3月決算から、賃貸不動産や遊休不動産について時価評価はしないものの、時価注記が求められます。「貸借対照表に賃貸ビル100億円と計上していますが、期末時価は70億円です」との注記です。各公開企業の不動産含み益や含み損が広く公開されることになります。

対象範囲は、(1)投資不動産に区分されている不動産(2)将来の使用が見込まれていない遊休不動産(3)その他賃貸されている不動産です。開発中を含みます。棚卸資産・自社工場店舗事務所は対象外です。重要性が乏しければ注記省略できます。


信託受益権は現物不動産と同じ扱い。不動産所有特定目的会社の出資証券や社債は対象外。

さてこの時価は「通常、観察可能な市場価格に基づく価額」とされ、まさに市場の時価です。

「市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額」とされ「不動産鑑定評価基準」による等です。不動産鑑定士の仕事は確実に増えます。

不動産はどう動くのか


減損会計が2006年3月期に強制適用された際に、それに先立つ1-2年で公開企業の不動産処分が急加速し不動産価格下落のクライマックスを迎えました。

今回も売り要因とはなっても買い要因とはなりえません。

投資家の目を絶えず気にする公開企業経営者にとり、本業以外での不動産取得は、注記だけとはいいながらも、決算での不安点要素を抱え込む危険な行為です。公開企業は更に不動産を所有しなくなります。




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賃貸用不動産は時価注記
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