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賃料差押でなく担保不動産収益執行制度による賃料回収

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2008年10月20日 第709号

2004年4月に担保執行に関する様々な法改正による新制度が始まりました。

かつての不良債権処理の現場からの要望が反映されたものでした。特に担保不動産収益執行制度については注目されました。

しかしすでに不良債権処理の峠は越えまた不動産価格は上昇を始めます。破綻事案は減少し、新制度は使われません。


東京地裁での執行官受理件数は2004年8件、2005年13件、2006年7件です(LIBRA 2007.11.)。

しかし今回のサブプライム問題に端を発した新たな不良債権処理が始まります。この制度が活用されることになりそうです。

賃料差押をするとどうなる


債務者である大家さん(賃貸物件の所有者)が返済を続けられなくなると金融機関(債権者で抵当権者)が「法的に回収する」と覚悟を決めると、「競売」と「賃料差押」を選択できます。

不動産価格下落により換価しても回収できないなら家賃でも取ろうかと金融機関は考えます。

それが現在は当然のごとく行われる「抵当権に基づく物上代位としての賃料債権の差押」(以下「賃料差押」)です。ちなみにこれが争いなく認められるようになったのは1989年10月27日最高裁判決からです。

昭和の頃には抵当権で賃料差押ができるかについては論争があったのです。

このように賃料差押は新しい制度なのです。そのために不都合が多くあります。

まず賃借人を特定しなくてはいけません。金融機関から賃借人に対して「家賃は大家さんに払わないで当社に払ってください。」と賃借人ごとに通知しなくてはいけませんから。銀行員等が表札を頼りに賃借人を特定する必要もありました。

また物件の管理は大家さんがやり続けます。金融機関は管理はせずに、賃借人から家賃を直接振り込ませるだけです。

管理費部分まで根こそぎ差し押さえる金融機関もあります。いずれエレベーター等管理費用は払われなくなり、テナントは逃げ去り、物件は荒れ果てます。

差し押さえる家賃もなくなり、競売価格も下がってしまいます。


担保不動産収益執行制度では


賃料差押の欠点を解消する新制度が2004年4月スタートの担保不動産収益執行制度です。

単に不動産からの家賃収入を受け取るだけではなく、不動産の運営管理と賃貸管理そのものを大家さんから取り上げます。そしてその管理運営をして家賃収入から債権回収を続けます。

例えば当初の5年間はこの収益執行で回収を続け、5年後に競売して債権全額を回収するといったことも可能です。

収益執行制度では大家さんに代わって管理人が不動産の管理を行い、賃借人募集を行いますから物件は荒廃しません。

また誰が賃借人なのか当初はわからなくても、その後の管理人の調査により、だれが家賃を払っているのかを判明させることが可能です。


不動産収益執行の管理人


管理人は裁判所が選任しますが、「信託会社、銀行その他の法人は、管理人となることができる(民事執行法94条2)」とあるだけで制約はないようです。

実際は弁護士や執行官が選任され、不動産の管理会社に実務補助者として委ねることになるようです。

いずれは破産管財人のように裁判所リストから選ばれることになるのでしょうが、現在はまだ過渡期のようで、申立債権者の推薦もあるようです。もちろん管理会社は管理手数料を取ってのビジネスになります。

なお申立債権者に対しては管理人報酬等のための予納金も求められます。

収益執行制度に適する物件は、管理コストに見合う規模の物件や、すでに荒廃していても管理により収益アップが予想される物件、賃借人の特定ができない物件、将来の換価のためにバリューアップを狙う物件といったところでしょう。





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項目:不良債権処理
担保不動産収益執行制度と賃料差押
新任意売却制度で後順位抵当権抹消
担保不動産収益執行制度
自己競落→占有排除→転売
不良債権処理の最終段階へ
債務超過で会社分割
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