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「目に見えない抵当権」と「一番抵当権」はどちらが優先?

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2010年5月10日 第784号
不動産に抵当権設定を見ます。不動産が競売等で処分される際にどの債権者がいくら回収できるのかは、抵当権設定の順位に従います。競落価格から手続費用等を控除した金額からまず一番 (第一順位) 抵当の債権者が回収します。余ったら二番抵当です。それでも余ったら三番抵当です。順番に従います。
ただし抵当権の設定がされていても債務残高がないこともありますので、何番抵当だから幾ら回収できるかははっきり分かりません。それでも抵当権設定額や根抵当の極度額を見ればだいたいの見当はついてきます。

目に見えない抵当権


ある土地に一番抵当を設定している銀行は「いざとなっても絶対に全額回収できる」と悠然と構えていました。しかしそうでもなかったのです。不動産所有者に未払いの相続税がありました。何が起こるのでしょうか。
不動産登記の乙区で抵当権を見るに当たっては、「目に見えない抵当権」を見なくてはいけないのです。いざ処分で配当となると、一番抵当、二番抵当、三番抵当…の順番には入っていない「目に見えない抵当権」が突然入り込んでくるのです。
それは租税債権です。

「国税及び地方税等並びに私債権…につき、法定納期限等…又は…(抵当権の設定)登記、…の古いものからそれぞれ順次に…充てるべき金額の総額をそれぞれ定める。(国税徴収法第26条第二項)」という規定です。
抵当権設定日と法定納期限等の早い遅いで優先順位が決まるということなのです。租税債権は抵当権設定無用なのです。
相続税の法定納期限は相続開始から10ケ月後、所得税なら翌年の3月15日です。
一番抵当の設定日より、未払い相続税の法定納期限等(法定納期限と法定納期限等とは違いますがここでは無視します) が一日早ければ、その一日前の日付の「見えない抵当権」が存在することになり、第一順位は一番抵当ではなく、未払いの相続税となるのです。
所得税ならば毎年3月15日付での各年分の「見えない抵当権」が存在することになります。

これが国税優先の原則です。


登記簿では銀行が一番抵当でも、実際は二番抵当になってしまうのです。未払いの相続税について税務署が滞納処分により、この土地を差し押さえるまで銀行は気がつかないかもしれません。しかしその時は銀行にとっては手遅れなのです。
銀行員にとって「相続税が未払い」というのはまだ把握しやすいところです。しかし相続税について物納申請中であっても同じで、物納完了までは「目に見えない抵当権」は存在します。
延納についても同じです。延納なら国に担保提供しているのが普通ですが、それ以外の土地についても延納による相続税納付が完了するまでは「目に見えない抵当権」が存在することになります。

相続税の連帯納付義務


相続税にはもっと厄介な「目に見えない抵当権」があります。「相続税の連帯納付義務」です。
「同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者は、その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について、当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる。(相続税法第34条)」
つまり兄弟が相続税を払えないと、その相続税についての納税義務が別の兄弟にもやってくるのです。たとえ自分の納付すべき相続税については全額納税済みであっても、なのです。
これはオカシイと税理士会も弁護士会も制度廃止を主張しているのですが、廃止になる気配は今のところありません。
相続や遺言で財産を受けた遠縁の親戚や第三者の相続税にまで連帯納付義務はあります。そしてそれは突然やってきます。
それも「目に見えない抵当権」付きでやってくるのです。

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