バードレポート

内部留保できるリート…民事再生で生まれた繰越欠損金

[1]一番上へ [2]前号 [3]次号
2010年11月1日 第807号

ニューシティ・レジデンス投資法人(以下「NCR」)は2008年10月に資金繰り破綻し11月には上場廃止になりました。

NCRは2009年10月に民事再生手続き開始し、2010年3月30日に再生手続き終結し裁判所監督下から離れました。スポンサーは大和ハウス系のビ・ライフ投資法人(以下「BLI」)です。

そしてBLIはNCRと2010年4月1日に合併しました。

BLIの資産規模は500億円から4倍の2000億円になりました。合併後最初の決算期が2010年8月期です。その決算書等からいろいろ見えてきます。

民事再生の税務メリット


上場企業の時価会計では時価を認識し不動産値下がり損(評価損・減損損失)も認識します。

しかし値下がり損は税務上では普通は損金になりません。

ただし、民事再生では財産評定として不動産等の評価替えをします。そこで生じる値下がり損は税務上の損金にできます。

10億円した物件が3億円と評価替えされたら7億円が値下がり損として損金になるのです。

意図的に損出しするには普通は身内会社等への売買をしますが、民事再生では所有継続のまま値下がり損計上ができます。


ただし普通一般の民事再生なら債務免除が生じるはずです。

10億円銀行借入で買ったものが3億円になり、銀行から7億円の債務免除を受けたなら、債務免除益7億円は課税対象です。

免除益課税ならせっかく再生した会社が法人税課税で再破綻です。一方で民事再生等では前述のように値下がり損計上が特に認められているのです(過去の期限切れ欠損金も使えます)。

債務免除益は値下がり損と相殺され課税なしとなり、法人税課税での再破綻はなくなります。

合併での資産受け入れ価格


BLIの決算書等から評価替えの様子が見えてきます。

旧NCR所有賃貸物件の当初取得価格でのNOI利回り(純収益利回り)は4.15%でしたが、それを合併時に5.48%で受け入れたとあります。利回りで25%上がりました。これは物件価格を25%引下げたと同じ意味です。

当初取得価格が当初簿価として、25%引き下げた価格で合併受け入れたということです。

従前NCRの資産規模は1900億なので、その25%は480億円です。民事再生での財産評定で480億円(推測)引き下げたのでしょう。それは480億円の値下がり損計上となったはずです。

さてNCRは民事再生法の適用を受けましたが、金融機関からの債務免除はありません。

つまり値下がり損は計上しましたが、相殺相手となる債務免除益がないのです。膨大な損金だけが残り、NCRには480億円(BLI決算資料の数字)の繰越欠損金が生まれました。

そのまま合併しました。存続会社BLIはこの旧NCRの480億円の税務上利用可能な繰越欠損金をそっくり引き継ぎました。

多額の繰越欠損金を抱えたリートの出現となりました。


欠損金は7年間有効です。BLIは、最長で7年間、一般のリートとは違う存在になります。

繰越欠損金を抱えたリート


リートは税制です。利益の90%超を配当すればその法人税課税はされません。税引き前での配当となり高利回り可能です。

しかし賃貸収益だけでなく物件売却益等の利益にも90%超配当が必要です。配当するので内部留保できません。リートとは配当することを義務化し利益内部留保を禁じた制度なのです。

しかし多額の繰越欠損金があれば配当を90%以下にしても、法人税課税の心配は不要です。BLIは当面の間、利益を内部留保する自由を得たのです。

いきなり旧NCR物件を売却し10億円の売却益です(財産評定が低過ぎだった?)。この売却益は配当に回さず内部留保すると堂々公表しています。他のリートに真似できないことです。


民事再生法は使いようですし、民事再生なればこそ使える税制メリットもあります。



[1]一番上へ [2]前号 [3]次号
以下この記事の属する項目内明細…項目一覧は→項目一覧へ
項目:整理整理と企業再生
ききょう企画の教訓
第二会社方式
経営者保証ガイドライン
地銀再編と金融円滑化法
抵当権消滅請求
任意売却最終処理
金融円滑化法2013年3月終了
銀行全支店への一括差押命令
中小企業金融円滑化法でリスケをしたら
抵当権設定での地主の承諾書
内部留保できるリート
貸金業総量規制
グループ法人税制…親子会社間売買は非課税?
日本航空の会社更生法申請に学ぶ
清算事業年度での土地売却
DIP型会社更生法と民事再生法
預金差押…一網打尽の差押
任意売却譲渡税と債務免除益課税
債務免除益課税と私的整理ガイドライン
包括根保証は廃止。極度額の定め
金融検査…デットデットスワップ
最低売却価格は売却基準価額へ
包括根保証がなくなる
競売内覧・一括競売・根抵当元本確定
短期賃貸借の保護が無くなる
「てき除」は「担保消滅請求」に
民事執行法…財産開示手続きと養育費
金融検査マニュアル中小企業編
家賃と敷金の相殺
詐害行為と相続
債権放棄ガイドライン
不良債権買いの外資
保証人のサイン検証
借金家庭崩壊
借金自殺時代
地主さん破産しないため
強制執行妨害
短期賃借権
ビルオーナーの破綻
銀行が債権放棄まで
借金の遺産分割協議
銀行員を信じるな
国税債権の優先
早期是正措置導入で銀行は
署名が違う金銭消費貸借
第二会社方式抜け殻会社方式

関連する項目
不良債権処理
債務処理の税務
譲渡税買換特例
債務整理と企業再生

このレポートと同じ年分リスト
2010年リスト

■バードレポートは1ケ月に8回発行で月額2500円(消費税別)のFAXレポートです。2年経過分をインターネット上に公開しています。

■最近の見本紙数回分をFAX情報ボックスから、あなたのFAXに取り出せます。

■FAX情報ボックス
自動応答電話03-5972-9569(途中で聞かれるボックス番号は「1番」です)へお電話いただき、メッセージに従い、送付先のFAX番号を指定して下さい。

■FAX配信のみです。mail配信していません。
メルマガふたつ

[1]この頁の一番上へ
[2]前号レポート
[3]次号レポート
[4]携帯メルマガ
[5]有料レポート
[6]発行元情報
[0]TOPページへ

■項目一覧リスト■
不動産ビジネス手法
不動産賃貸経営
不動産と金融会計
定期借地権定期借家
不動産証券化
債務整理と企業再生
不良債権処理
債務処理の税務
相続税対策申告
路線価評価相続評価
物納と相続税調査
譲渡税買換特例
住宅税制住宅減税
固定資産税
税制改正
その他不動産税制
その他税制
相続対策と遺産分割
生命保険
その他不動産関連
その他
トピックス版2001年
トピックス版2002年
トピックス版2003年
トピックス版2004年
トピックス版2005年
トピックス版2006年
トピックス版2007年
トピックス版2008年
トピックス版2009年
トピックス版2010年
トピックス版2011年
トピックス版2012年
トピックス版2013年
トピックス版2014年
トピックス版2015年
バードレポート以外
メルマガ2012年
メルマガ2013年
メルマガ2014年
カネボウ劇場
発行元情報

■同じ発行年分のリスト■
2010年リスト
[1]この頁の一番上へ
[2]前号レポート
[3]次号レポート
[4]携帯メルマガ
[5]有料レポート
[6]発行元情報
[0]TOPページへ